【事案のポイント】
東京都港区に土地を所有している会社であるYは、日本有数の不動産会社であるXからサブリース事業の提案を受け、平成3年7月、Xから預託を受けた敷金を建築資金として建物を建築し、完成した建物を、【賃貸期間20年間、敷金234億円、建物引渡し時の賃料年額18億円】という条件でXに賃貸する契約を交わした上で、建物を建築しました。
このXY間の賃貸借契約書には、【賃料を、本件賃貸部分引き渡しの翌日から2年を経過するごとに8%を値上げする】旨の賃料自動増額特約と、【急激なインフレ等経済事情の激変、又は公租公課の著しい変動があったときは、協議の上、8%を上回る値上げをすることができる】旨の調整条項が記載されていました。
Yは、平成7年2月28日、本件建物を完成させ、Xに対して本件賃貸部分を引き渡しましたが、
Xは、Yに対し、本件賃貸部分引き渡しの前である平成7年2月6日に、オフィス賃料減額の意思表示をし、また、平成8年7月3日にも、賃料減額の意思表示を行いました。
Xは、Yに対し、借地借家法32条1項に基づく賃料減額の訴えを提起しました。これに対してYは、本件サブリース契約は事業契約であり賃貸借契約ではないから同法32条1項の適用はない旨主張してXの賃料減額請求を争いました。
【争点のポイント】
①いわゆるサブリース契約は賃貸借契約なのか事業契約なのか
②賃貸借契約であるとしても、賃料自動増額特約が優先し借地借家法32条1項は適用されないのではないか。
③サブリース契約に借地借家法32条1項が適用されるとしても、本件のように、契約に基づく建物の使用収益の開始前に、借地借家法32条1項に基づいて賃料の増減を求めることはできないのではないか。
参考
(借賃増減請求権)
第32条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。