【成功体験と課題】
――ここまでのお話を伺っていますと、順風満帆なビル経営をされたように聞こえますが、実際は計画通りの資産運用になったのでしょうか。そのあたりの忌憚の無いお話を伺えるとありがたいのですが。
- F:
- 計画通り行った時期と、そうではなかった時期があります。もし26年前の自分に一言で言えるとしたら、「方向性は合っているが、空室の恐ろしさを過小評価しないように」と伝えてやりたいですね。
――空室の恐ろしさを過小評価されていたのですか。
- F:
- そういう事になります。当時は景気も上向きでしたし、とにかくオフィスビルは駅の近くでありさえすればテナント募集に困ることはありませんでした。一等地とまではいきませんが、都心の駅近くに土地を持っているというアドバンテージがありましたので、ビル建築後数年は順調だったと言ってもよいと思います。
――そうすると、ビル建築の数年後からが思い通りにはいかなかった時期ということでしょうか。
- F:
- そうですね。景気が悪化してテナントのニーズが変化したと思います。「賃料よりも駅の近くであること」を重視するテナントの数が減少し、駅から5~10分程度離れていても、「ビルのグレードが高く、外部環境に優れ、賃料が適切である」ことを重視するテナントが増えたのだと今なら分かります。結果、ニーズからズレたウチのビルは徐々に空室が埋まらなくなってきました。