【資産運用-試行錯誤】
――バブル崩壊ですか。影響は色々あったことかと思います。試行錯誤はどのようなことをされて、その結果どのように立て直されたのでしょうか。
- S:
- 当時私は、購入段階では慎重に検討していましたが、購入後の運営実務は自分で行わず、経営する会社の総務部に任せていました。もちろん、空室が多くなったという事実は知っていましたし、原因はバブル崩壊という外的要因ですと報告も受けており、それなりに納得もしていましたので、しばらくは『そのうちに空室も埋まるだろう』という安直な考えを持っていました。今思えば、ビルを購入することでもう仕事は済んだかのように思ってしまっていたんですね。ビルを保有することは相続税対策と資産運用の為に継続せねばならない事業であるのに、まるで既にやり終えたかのように錯覚してしまっていたのです。私の場合は借金をしてビルを買ったわけではなかったので危機感も薄かったのでしょう。バブル崩壊で多少足踏みはしたけれども、そのうち回復すると、漠然と大丈夫だろうと思っていました。
――ところがそうはならなかった?
- S:
- そうはならなかった(笑)。1年経っても、2年経っても空室は完全には埋まらなかった。ところが他のビルは埋まっているビルもある。流石におかしいと思い始めたわけです。総務部に対策を確認したら、基本的には募集は仲介業者に任せていた。仲介業者に確認したら「お客は紹介しているがなかなか条件面で折り合わない、もっと賃料を大幅に安くしてくれ」と言う。最初は仲介業者を信じて大幅に安くしてみたり、フリーレントをやってみたりもしました。ところがそうやって入居したテナントは直ぐに倒産してしまったり、退去してしまったりして定着してくれない。これはマズイと思いまして、遅まきながら保有しているビルと近くの同規模で埋まっているビルを見に行きました。