オーナー様の思想はビルの個性当社で、エントランスホールに水景色のあるビルを手掛けたことがあります。ここで言う水景色というのは、例えば壁面を水がさらさらと流れているような、水を使用したオブジェのことです。エントランスを入ると真っ先に目に入り、心象的にも来館者に癒しの作用を与える効果があり、個人的にも好ましいと感じている事例です。
しかしこのような例はあまり見かけることがありません。嗜好を偏らせずに、シンプルで極力無駄を省いていこうとすると、必然的に物理的に有用な機能を有しない設備がどんどん標準から外れてしまうのは無理のないことかもしれません。
そのような状況であるからこそ、空間自体の印象を良いものに変えられるような、空間の雰囲気そのものを作り出すオブジェの力を改めて認識し、事業における可能性を探っていくことも、大きな差別化の一因になると考えています。オブジェに込められたオーナー様の思想は、ビルの明確なコンセプトとなりえます。その思いが強いほど、これからの時代を生き残るビルになる、そんなふうに思えます。