しかしその時の私は、オーナー様の人柄や優しさに触れて、私にできることならと二つ返事で引き受けました。それはどちらかといえば感情的な気持ちのままに、咄嗟に反応した返事であり、行動でした。その行為が間違っていたとは思いませんが、この出来事はPMとして素通りすべきことではないと感じ、考え、ひとつの答えにたどり着きました。大事なのは、どちらの対応が正しいかどうかということよりも、その時の判断が主体性を持っていたか否か、ということのように思えたのです。
振り返ってみるとその時の私は、PM業務の原理原則に則って冷静に物事を判断するというよりは、判断基準がその日その時の自分の感情に流されていました。そのため、本当にオーナー様のお役に立てた、という感覚もしっくりと持つことはできていなかったと思います。
それがなぜかを考え、思い当たったのが、オーナー様からのお願い事を引き受けるという現象は同じだとしても、それを感情のままに判断することと、主体的に判断することには大きな違いがあるということでした。主体的であればあるほど物事を客観的に捉えることができ、より確かな判断が得られるのだと思います。
そう考えると、感情のままに引き受けることはむしろ、オーナー様に対して申し訳ないことのように思えたのです。私にとってあの日は、とても貴重な1日でした。