調整は、想像よりもはるかに困難でした。テナント様とオーナー様、お互いの主張は当然正しく、間違っている人は誰一人としていない状況です。そんな中、お互いの立場から生じる食い違いをどう調整していったら良いのか?
それでも彼は毎日一生懸命取り組んでいます。ある程度の方向性は本人に考えさせ、それを微調整しながら実際の交渉には僕も同行をする。そんなテナント様、オーナー様との調整の日々が続きます。
そんな中で、僕はあることが疑問になります。
彼は、オーナー様から信頼を得ていないのではないか?
同行を繰り返す中で僕が感じたことでした。ただしそれは、信用されていないという類の問題ではなく、彼の経験値の少なさと若さからか、100%の信頼を勝ち取れていない。というものです。
もしかしたらこれは、通常の業務を行っている中では見えてこない部分なのかもしれません。ただそれが、今回の改修工事の規模、そして対応に精度を求められる状況下だからこそ初めて、オーナー様が一抹の不安を持たれてるように感じられたのかもしれません。そして、それを一番肌で感じているのは他の誰でもない、彼本人でした。
これはある意味、仕方のない部分もあります。経験や年齢も、ある程度物理的な年数を重ねないと手に入らない部分もあります。
結局、この調整に関しては、僕が同行を続けながら、彼に話し方や交渉の仕方を経験させ、テナント様とオーナー様が互いにある程度納得のいくラインで終結を迎えます。この時点では、彼に対してプラスになったことは少なかったのかもしれません。